Aliens!
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 最近、書く事が思いつかなくて更新を怠っていたのだけれど、昨日とてもよい映画を見たので興奮の冷めやらぬ内に書いておこうと思う。

【地球防衛軍】東宝1957年制作

 特撮の監督は円谷英二で、名優志村喬が「偉い博士」的なポジションで出ている。
話の筋は大爆笑を逃れられない代物なのだが、特撮は凄い。流石円谷だと手放しで評価できるものだ。

そして志村喬は「志村喬」と言われて思い浮かべるような「黒澤作品における深みのある重厚な演技」のそれではなくて、もうなんか「仕事ですから」的な、消化試合的なあっさりとした演技。黒澤作品出演時の気合の入りようと比較すると、明確に手抜きなのが判るんだけど、そこは名優。スキが無く完成度の高い「手抜き」。流石としか言いようがない。「手抜きなのに90点」という感じ。

 物語の筋は、さっき書いたように大爆笑を逃れられないのだけれど、そこはかとなく「1957年」という時代背景が滲み出ているものだ。

例えば、冒頭から「悪い宇宙人が『電波で』操作する巨大ロボ」が山から出現し、盆踊りに浮かれる山村を襲うといういきなり切迫した事態展開から始まるのだが、その「巨大ロボ」がとても律儀

 「巨大ロボを目の前にした駐在さん」がパニくってピストルを発砲する。
「巨大ロボ対ピストル」というその戦力差から、そんな攻撃無視しても良いようなものなのだが、巨大ロボ、律儀にもビームで反撃
その後、巨大ロボは逃げ惑う住民を律儀に追いかけ、そして律儀に鉄橋を渡ろうとする
 普通だったら「巨大ロボなんだから鉄橋なんか律儀に渡ろうとしないだろう」と思うものだろうが、自衛隊が律儀に鉄橋に爆弾を仕掛け、巨大ロボがそこを律儀に渡ろうとしたところを爆破。巨大ロボは(その体格からすると凄く浅い)谷底に顔面から落下して終了。落下と言うよりむしろ「転んで顔面を強打」というに近い。

このあたり「古きよき日本人の律儀さ」が滲み出ている。

そして例によって政府から「現場から半径90Kmの住民を避難させろ」という命令が出るわけだが、そこは流石「太平洋戦争の記憶がまだ濃厚」な1957年なので、描写される避難が物凄く迅速。大人は大事なものだけを風呂敷で持って整然と列車に乗り、子供は列車の窓から押し込む。満州から逃げ帰るシーンだと言っても通用するような「切迫+迅速」感。流石は経験者世代だと言ってよい。

謎の悪い宇宙人の「地球(っていうか日本)に対する要求」も、まずはリーズナブルなところから入る。
さしあたって嫁を5人くれ

なんでも悪い宇宙人は放射能に汚染されて子孫を残す事が難しいらしく、そのため丈夫で健康な嫁が欲しいのだそうだ。わからんではないし、しかも色々突っ込みたいのだがそれは置いといて、「さしあたって」が曲者で、結局30人位拉致してたりする。
 「さしあたって」に象徴されるように宇宙人の要求は、なし崩し的に、徐々にエスカレートして、「え、それどの文脈からそうなったの?」という困惑と共にいつのまにか「地球よこせ」になってしまう。

「嫁5人」で我慢しておけばよいものを、調子に乗って「地球よこせ」まで言ってしまったものだからヤブヘビ。まさにヤブヘビ
国連で大した議論もなく、なんとなく「地球防衛軍」結成。

もうあとは破れかぶれで派手な特撮戦闘シーン。

アメリカが開発した自走する大型パラボラアンテナが登場するのだが、宇宙人がそれを見て絶句。そりゃそうだよね。「なんで?」と思うよね。
どうやら「宇宙人のビームを反射する兵器」で、これが勝利に繋がるわけだが、宇宙人も宇宙人で最初の2~3発で「反射する」って判った訳だからビーム撃たなきゃいいのに何故か乱射。結局自分のビームで自分がやられていると言うワケのわからない状態。

まぁ、結局宇宙人は人類の団結によって敗れ、っていうか段取りの悪さによって敗北して去って逃げていくわけだけれど、これはとてもよい映画だ。
「円谷ならここまで出来ますよ」的なカタログ的な作品とドライにみなすことも出来るけれど、僕はこれを敢えて「日本版インディペンデンス・デイ」と呼びたい。そして「科学技術の発達に差があっても段取りは大事ですよ」という教訓映画であるとも言っておきたい。
一度は観て(爆笑して)もらいたい作品だ。